研究概要 |
南部フォッサマグナ地域は,フィリピン海プレ-トの北西方向への移動に伴って北上してきた火山性地塊が中期中新世以降,次々に衝突してきた地域と考えられてきた。そして,同地域には,その火山地塊起源の地層群とそれらの地塊衝突前に,地塊の前面に存在したトラフを充填した堆積物起源の地層群が分布してすることが期待されていた。本研究は,従来,この様な観点からは検討されたことのない富士川地域に分布する地層群に焦点を絞って、地塊衝突現象を実証するとともに,南部フォッサマグナ内で,富士川地域以外の地域との比較も行い島弧の衝突・付加テクトニクスの実態を明らかにすることを目的に研究を進めた. 結果として,南部フォッサマグナにおいては,中期中新世以降現在に至るまでの間に,火山性地塊が4回衝突・付加したことが明らかになった.最初の衝突は約12Maの櫛形山地塊の衝突・付加である。第2回目の衝突は9Maー7Maの御坂地塊のの衝突,第3回目が丹沢地塊の衝突(5Maー3Ma)であった.最も新しいものは1Ma前後に起こった伊豆地塊の衝突・付加である。富士川層群の層序・層相の検討の結果,富士川層群中には第2回目と第3回目の衝突に関連して堆積した礫岩優勢の地層群が発達していることが明らかになった.特に,第3回目の丹沢地塊の衝突に関連した礫岩類は富士川地域で,広い分布を示していた.これらの礫岩層は,土石流堆積物・礫質タ-ビダイト・三角扇状地堆積物からなっているが,前2者は,チャンネルを充填した堆積物であることが,堆積体の形状や古流向から明らかになった.富士川層群中の構造要素から復元された古応力は、水平最大圧縮主応力の方向が,北西ー南東と南北の2系統であった.前者は,伊豆地塊衝突以後の応力で,フィリピン海プレ-トの現在の運動方向に一致している。後者は,丹沢地塊衝突以前の応力場を示している可能性が強い.
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