1.以下に述べる地域での地質調査および岩石試料採取を実施した。 (1) 阿寺断層南端部周辺の詳しい地質調査を行い、断層露頭の位置・性状などを調べ、この断層についての基礎試料を得た。 (2) 調査地域内に分布する花崗岩類およびそれを原岩とするCata clasiteの定方位試料を採取した。 2.上記採取試料の一部について、研磨薄片を作成した。残りの試料については、現在、研磨薄片を作成中である。 3.SEMによる観察を一部の試料について行い、以下の見通しを得た。 (1) 反射電子像については、その像の観察および解析方法に一応の目途がついた。つまり、反射電子像は、花崗岩構成鉱物の結晶粒界を明瞭に表現することから、粒界割れ目の観察に適していることがわかった。 (2) 燐光像については、花崗岩構成鉱物は発光量が少ないので、現在、検出方法について検討中である。 4.以上のSEM観察結果から、断層運動と断層周辺に分布する花崗岩類の微少変形構造との間には、次の関係があることがわかった。 (1) 断層周辺には、断層の左横ずれ変位によって発生した右横ずれ小断層が多数発達している。 (2) 粒界割れ目は、断層に近づくにつれてその発生数が多くなり、断層運動による摩擦熱の発生を示唆する。 (3) 断層周辺の節理には緑泥石などが認められ、熱水活動の存在を裏付ける。 (4) 節理の方向、分布等は断層に密接な関係を持っており、断層運動に伴って発生したと考えられる。
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