研究概要 |
本研究では,西南日本内帯および外帯に産するジュラ紀から新第三紀までの花崗岩類に対して,Sr・Nd同位体比を含む岩石化学的研究を行い,それらの成因について検討した。その結果,次のような点が明らかにされた。 1)山陰の大山付近には役180Maの年代を示す片麻岩類およびそれらに調和的に貫入するト-ナル岩類があり、これらは飛騨帯の片麻岩や般津花崗岩類に対比される。従って山陰地域における飛騨帯の南限は、従来考えられていた位置よりかなり南下することが明かとなった。ト-ナル岩のSr同位体初生値は、0.705以下であり,山陰の白亜紀〜古第三紀の花崗岩類よりやや低く、飛騨外縁帯近くに分布する船津花崗岩類に類似する。これらは地殻下部を構成していた海洋性の塩基性岩類がマグマソ-スとなった可能性がある。 2)白亜紀〜古第三紀花崗岩類のSr・Nd同位体初生値は,中国地方の脊梁付近を北東-南西方向に横切る境界をもって、漸移的に変化する。両者の境界付近には、同位体比の異なる岩体が混在する。両者はマグマソ-スの違いを反映しているものと考えられ、山陽や領家の花崗岩類はジュラ紀付加体の下にもぐり込んだ古領家陸塊が主要なマグマソ-スとなった。一方、山陰地域の花崗岩類は飛騨帯南部域の花崗岩類と類似したソ-スが考えられる。 3)外帯の花崗岩類は、岩相によって同位体初生値が異なる岩体があり、早期貫入の塩基性岩で低く、末期貫入の酸性岩ほど高い値を示す。しかし、いずれも母岩の堆積岩類よりはかなり低く、マグマのソ-スがマントルから地殻下部、中部へと移動した可能性を示している。
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