本研究では、九州-琉球の四万十帯始新統の地質時代、堆積・造構作用の解析に基づいてサブダクション・コンプレックスの対比ならびに、沈み込みシステムの側方への変化を考察した。 九州の日向層群(中期始新世後期〜前期漸新世:P.13-p.21a)は微化石年代、ならびに堆積相・変形相の性質から、前弧の堆積・造芳環境が復元された。付加体はタ-ビダイト末端相を示す海溝充填堆積物からなり、底付け付加(メランジュ・ユニット)、および剥ぎ取り付加(下部フリッシュ・ユニット)の2つの付加変形過程が認めらた。下部フリッシュ・ユニットの上部には海溝斜面に比較できる乱雑堆積物が伴われる。下部フリッシュ・ユニットの上位には、ほぼ同時代の上方粗粒・厚層化のシ-クウェンス(上部フリッシュ・ユニット)が不整合で重なる。 琉球の始新統は奄美大島(和野層:p.13-.p14)で中逆始新世後期の層序が認められ、東西両側には上部白亜系(セノマニアン)が分布する。和野層および嘉陽層(沖縄本島)は共に剪断褶曲の系列の大規模な複向斜構造を示し、中〜小規模の寄生褶曲を伴う。これらは、付加変形を欠き、陸側からの卓越流向をもつタ-ビダイトシ-クウェンスからなる。堆積環境は前弧海盆の、下部斜面から中部扇状地(和野層)や、深海扇状地のテラス(嘉陽層)に比較できる。九州と琉球弧始新統では、前弧海盆の堆積作用とともに、ほぼ同時代の付加体の有無などに重要な相違点が見いだされる。前弧のフレ-ムワ-クから見た場合、九州では付加体の成長を伴った付加型、琉球では付加体の成長が貧弱かあるいはそれが消費された海溝侵食型の前弧に比較できよう。この地域変化は、フィリピン海プレ-トの島弧に対する収れん角詞の違い一九州では直交型、琉球では斜め沈み込型一を示唆する。
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