本年度は研究の二年目にあたり、伊江島を含め伊是名島においても、遠洋性チャ-トの産状を観察し、サンプリングを行なった。この結果、総数172個のサンプリングを行ない、これらのサンプル総てについて化学分析を終了した。その結果は「研究成果報告書」やSedimentologyへの論文としてまとめられているが、いくつかの興味深い知見を下に記す。 (1)遠洋性チャ-トにはCCD以浅の海山上に堆積するフリントノジュ-ルとCCD以深の深海底に堆積する層状赤色チャ-トの二種類が含まれるが両者とも、遠洋粘土鉱物を含むことに由来するFeとMg間の強い正の相関関係が見られる特徴がある。 (2)ジュラ紀から白亜紀後期にかけて堆積した遠洋性チャ-トにおけるFe/Mg比は、現在の太平洋の遠洋性堆積物のFe/Mg比とは異なり、むしろその比は大西洋の遠洋堆積物におけるものと似た値になる。これはジュラ紀から白亜紀後期における中央海嶺等の分布など現在の太平洋のものというよりは大西洋に似たような分布であったことを示唆させる。 (3)半遠洋性の多色性層状チャ-トにおけるFe-Mg間の相関係数は遠洋性のものと比べた場合、若干低い値になる。 (4)CCD以深、CCD以浅を問わず、遠洋性チャ-トを含む地層における化学層序の特徴から、その基盤は、玄武岩のような火成岩であることが解る。 (5)CCD以深の深海底における遠洋性チャ-トの層序を見ると、下位から、基盤の玄武岩、チョ-クあるいはミクライト質石灰岩、層状赤色チャ-トと堆積するが、さらにこの上位に半遠洋性の多色性の層状チャ-トが堆積している可能性があるが、今回この層序を直接的に観察する事が出来なかったので、今後このような層序を直接陸上において観察する事が重要な課題となるであろう。
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