九州南東部では姶良カルデラ起源の火砕流堆積物、九州中部では阿蘇カルデラ起源の火砕流堆積物と降下火山灰堆積物、山陰地方では大山起源と姶良カルデラ起源の降下火山灰堆積物から試料を採集した。火山が爆発的噴火を行うときのマグマの均質性を検討するため、単一のクーリングユニットあるいは降下火山灰層のいくつかの部分から試料を採取した。 採集試料については、水洗・乾燥した後、火山ガラス片と軽石片を選別した。火山ガラス片と砕いた軽石片を合成樹脂板に埋めこみ、研磨片を作成した。エネルギー分散型X線分析装置を用いて、研磨片にした火山ガラと軽石の主成分元素(Si、Ti、Al、Fe、Ca、Na、K)について定量した。火山ガラス片個体内、相互間およびクーリングユニット内での組成変化はFeとKが比較的大きい。 雰囲気を制御しない状態で、イメージファーネス中に火山ガラス片を入れ加熱・融解の実験をした。1000℃前後まで昇温速度を100℃/分〜1000℃/分の範囲で条件を変え、双眼実体顕微鏡で火山ガラス片の形状変化を観察しながら、融解温度を求めた。 火砕流堆積物および降下火山灰堆積物中の火山ガラス片は、これら堆積物をもたらした噴火が、マグマの急激な発泡によってひきおこされたことを裏づけて、多孔質硝子が破砕されてできた曲面をなす板状、稜や隅部分のついた破片となっている。今回検討した試料では、降下火山灰堆積物の方が、火砕流堆積物よりも無色透明な火山ガラス片の量比が高かった。これは発泡が激しかったときの火山ガラス片が火山灰としてより遠方まで飛び散ったことを示すのであろう。
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