浅間山周辺、草津温泉付近、新島、式根島、神津島、大島など関東地方で降下火山灰堆積物の火山灰試料を採取した。 採集試料については前年度と同様な処理を行った後、火山ガラスを埋め込んだ研磨片を作製して、エネルギ-分散型X線分析装置を用いて主成分の分析を行った。参照試料とガラス質溶岩の試料を兼ねて、地質調査所調製の地球科学的標準試料JRー2(和田峠産黒曜岩)の粉砕前の小片をも分析した。 JRー2の総化学組成のデ-タを基準として、SiO_2、Al_2O_3、ΣFeO、CaO、Na_2O、K_2Oについて分析値を補正した上で、火山ガラスの組成変化を比較した。火山ガラス粒子個体内における組成変化も火山灰層内での組成変化も、SiO_2で約1〜2wt%である。分析に供した火山ガラスはいずれもSiO_2含量が高いが、比較的含量の低いΣFeOが変動幅が大きい。特にΣFeO含量の高いガラスは褐色味を帯びている。また結晶を含むガラス片では、結晶の周縁部で組成が急変している。 インコンパチビリティの高いKと他の元素との原子比をとって組成変化をみると、噴出源ごとのマグマの組成の特徴が良く把握できることがわかる。今回分析したガラスにおいてはSi/KとAl/Kの間の相関が明瞭である。即ち、(1)メルトの組成はSi/Kの低下と並行してAl/Kの低下の方向に変化する。(2)Si/KとCa/KあるいはNa/Kとの間にもはっきりした相関が認められることがある。しかし(3)Si/KとFe/Kの間には明確な相関が認められない。(1)と(2)はSiとAlが重合体的な結びつきをしていて、斜長石やアルカリ長石を析出しやすい状態になっていることを示すのであろう。(3)はFeが珪酸塩鉱物をつくらず、酸化物として析出しやすい状態にあることを反映していると考えられる。
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