一枚の溶岩流においてもかなり組成の異なる部分が混在する現象が見られることから、広域テフラATをもたらした姶良カルデラの爆発的大噴火を起こしたマグマの均質性を検討した。ATの地表流下部分である火砕流堆積物の上部から下部に至るまで、火砕物中に含まれている火山ガラスの主成分組成はかなり一定していて、SiO_277〜78wt%、Al_2O_312.5〜13.0wt%、FeO1.5〜2.0wt%、CaO1.0wt%、Na_2O3.5〜4.0wt%、K_2O3.0〜3.5wt%である。分析した火山ガラスは無色透明なものから褐色不透明に近いものまで、みかけの異なるものを含むが、褐色ガラスでややFeOに富むものもみられたが、全体的に大きな変化はない。 大山および蒜山付近の火山灰層中の火山ガラスには、主成分組成からみて、次の3つのグル-プが識別された。1)SiO_273〜74wt%、Na_2O3〜4wt%、K_2O2.5wt%、2)SiO_275.5〜76.5wt%、Na_2O3〜4wt%、K_2O3wt%、3)SiO_277〜78wt%、Na_2O3.5〜4.5wt%、K_2O3.0〜3.5wt%で、2)は微量元素の塩素含量がやや高いのが特徴である。3)はATに似る。 伊豆大島の玄武岩質火山灰中に挾在する白色火山灰中の火山ガラスは新島の向山円頂丘溶岩よりも神津島の天 山円頂丘溶岩のガラス質石基の組成により近い。 分析の際に基準物質として用いたガラス質流紋岩JRー2(和田峠産黒曜石)はSiO_276.2〜77.5wt%、Al_2O_312.4〜13.1wt%、Na_2O4.0〜4.6wt%、K_2O4.3〜4.8wt%の組成範囲を示した。 ATとJRー2の火山ガラスではSi/KとAl/K、Si/KとNa/Kの間に明瞭な相関が認められ、珪長質メルトにおいてはSi、Al、NaとKとの間の相対的な増減関係が卓越していることがわかる。
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