本年度主として科研費による仕事は、1)北陸の扇状地の扇頂における“隆起扇状地"の段数の比較と、2)松本盆地と富山堆積盆地との河成段丘との比較を行った。 北陸には黒部川、常願寺川、神通川、庄川、手取川、九頭竜川などの大河川がある。北陸の約500kmの間で浸食基準面である海水面はいつも同様と考えられる。そこで各河川の扇頂での“隆起扇状地"の段数は背後山地の運動と考えられる。 これまでの調査により、飛騨山脈の隆起は激しいので東にいく程“隆起扇状地"の数は多くなってよい筈である。ここで“隆起扇状地"は中位面を除いた低位面と現扇状地面で2〜3万年より新しい面である。黒部川で3面、常願寺川で4面、神通川で4面、庄川で3面である。それに比べて手取川で1面、九頭竜川で1面で、明らかに東に多く、西ですくなくなっている。このことは海水準が一定であるので背後の隆起が東側で大きいと考えざるを得ない。 北陸の段丘層は高位・中位・低位面に大きく3分した、もちろんどちらにいれたらよいか、わからないものもある。東福寺累層・上段累層・下段累層は、それぞれ地形面に対応する。低位面はテフラのAhがカバ-している所もあり、 ^<14>C年代で23Ka、中位面はDkpでおおわれ50Kaである。 松本盆地には北陸にような段丘区分はなく、古い礫層は表面ですくない。しかし梨ノ木ロ-ム、小坂田ロ-ム、波田ロ-ムが広く分布し、赤木山面・波田面・森田面が北陸の高位・中位・低位面に相当しよう。段丘面は松本盆地の東西でも対比がむつかしく、飛騨山脈東側では古い面が新しい面におおわれるためか、古い面が余り発達しないで、新しい面だけがよく発達し、高瀬川や梓川を東側においやっている。
|