1.文部省在外研究の機会を利用して、アムステルダム大学、フランス自然史博物館、大英博物館、ハ-バ-ド大学、スミソニアン自然史博物館、フィラデルフィア科学アカデミ-、ロスアンゼルス郡立自然史博物館、カリフォルニア科学アカデミ-においてトマヤガイ科二枚貝の標本並びに文献調査を行なった。 2.トマヤガイ科には大きく二通りの生活様式がある。一つは、足糸を欠くか、ごく弱い足糸しか持たず.堆積物表層近くで自由生活をするフミガイやCyclocardia類.もう一つは.足糸により.小石や植物の根などに付着して生活するトマヤガイ類。前者は殻頂が比較的中央よりにあり、前後対称形に近い。後者は殻頂が著しく前傾し、生活様式にあわせて.より特殊化した形態だと考えられる.軟体部の構造からも後者は足糸による付着生活のための特殊化が著しいと言われている。 3.前後対称に近いマルフミガイ属Cyclocardiaを基にして、デカルト座標をy軸方向に圧縮する単純な変形を施すと、0.9〜0.8の圧縮でマルフミガイ属内の他の種類に近い形態が得られる.単純な圧縮では.前後閉殻筋、殻頂、〓歯、靭帯のx軸上での位置は変わらず、同属内或いは近緑な属間の形態の誘導が可能だと考えられる。 4.y軸をθだけ傾ける斜交座標では、基本のマルフミガイ属の図形から亜科の段階で区別されるトマヤガイ属に近い形態が得られる。 5.単純な圧縮と斜交座標を組み合わせた変形により、一層実際の種類に近い形態が得られる。 6.Thecalia属など、保育襄が特殊な形に発達した種類は、簡単な座標の変換では似た形を作り出すことが出来ず、他のグル-プとは違った、ごく特殊化した分類群だと考えられる。
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