25Gpaあるいはそれ以上の圧力領域での相平衡や元素分配実験法の確立をめざして、実験技術の開発、改良をおこなった。第1に高圧発生効率に及ぼすアンビル材質の影響を系統的にテストし、最適な材質を確定した。第2に高温発生用セルの改良をおこない、2000℃略域に達する高温発生・正確な測温を可能にした。更に高温高圧用デ-タ収集システムを開発し、実験の省力化・デ-タ精度の向上をおこなった。これらの結果、25Gpaを越える高圧下における安定で精度のよい高温高圧実験が可能になった。 上記のような実験技術を基礎にマントルにおいて重要ないくつかの鉱物の相転移・相平衡実験をおこなった。第1にダイオプサイド(CaMgSi_2O_6)組成に対する25Gpaまでの相転移を研究し、これがCaSiO_3ペロフスカイトとMgSiO_3成分に分解することを明らかにし、従来の論争に決着をつけた。第2にエンスタタイト(MaSiO_3)パイロ-プ(Mg_3Al_2Si_3O_<12>)系の相関係を従来よりも格段に高い圧力・温度領域まで明らかにした。またフォルステライト(Mg_2SiO_4)単結晶に対して異った応力条件のもとでのスピネルヘの転移機構を透過電顕等を用いて解明した。更に以上のようなデ-タをもとにアント構成物質の候補であるパイロライトやMORB中における相転移について詳細に検討した。 以上のような相転移に関する実験結果および最近蓄積されている高圧相の弾性・熱物性等のデ-タを用いて、アントル構成物質の高温高圧下での密度・地振波速度を計算し、観測に期づくこれらの地球内部でのプロファイルと比較した。この結果パイロライト組成が上部マントルおよびマントル遍移層において観測テ-タをよく満足する適切なモデルであることが明らかになった。
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