1.隠岐変成岩が蒙った複変成作用を岩石学的に解明すべく、野外調査と室内実験を行った。その結果、以下の事柄が明らかとなった(星野・伊藤)。 (1)泥質片麻岩や注入片麻岩様ミグマタイトには、黒雲母の定向性による片理面が発達し、片理面は源岩の層理面と一致する。また全域にわたって小褶曲構造が発達し、褶曲軸の方向は、北部地域では北北西と南南東の2方向、南西部地域では西方向、南東部地域では東方向へそれぞれ緩やかにプランジしている。 (2)岩石中に平衡共存する鉱物のうち、珪線石・角閃石など柱状鉱物の示すリニエーションも、上記の小褶曲軸の方向に一致する。よって、小褶曲構造は、現在認められる鉱物組合せを生じさせた上部角閃岩相の広域変成作用に伴って形成されたものである。これを新期変成作用と称する。 (3)新期変成作用以前に、グラニュライト相変成作用が起ったことを示すいくつかの新証拠を、顕微鏡による組織観察及びEPMA化学分析によって明らかにした。これを古期変成作用と称する。なオ、古期変成作用の時代に形成された構造要素が、新期変成作用時に形成されたものと同一のものであったかどうかは明らかでなく、この点を今後追求する必要がある。 2.隠岐変成帯ー飛騨変成帯形成の時代論を総合的に展開する上で、特に新期変成作用に関連して、その当時外帯で形成されつつあった秩父累帯ー四万十累帯のテクトニクスを十分考慮することが、きわめて重要であると考えられる。そのような観点から、紀伊半島中央部、山上ケ岳地域の秩父累帯ー四万十累帯の地質学的研究に加わり、成果をあげた(星野)。
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