研究概要 |
1.天然のマンガン鉱石 愛媛県上嵯峨谷鉱山産のカリオピライト鉱石:本鉱山は秩父帯北帯にある弱変成層状鉱床で主鉱石はカリオピライトである。これらを顕微鏡下で観察するとその産状により大きく層状のものと脈状のものに区別することができる。また鏡下において光学的性質などの異なるものも見られた。しかし、EPMAによりこれらの化学的性質を検討したが著しい差異は認められなかった。 愛媛県三久保鉱山産の菱マンガン鉱鉱石:本鉱山も秩父帯の北帯に属し、主要鉱石は菱マンガン鉱である。種々の産状を示す菱マンガン鉱が鏡下で観察されるが、その化学組成をEPMAで調べてみても大きな差異は認められなかった。 京都府丹波山地のマンガン鉱石:弥谷,地袁,足谷の三鉱山で試料を採集した。鉱石は菱マンガン鉱以外に主としてハウスマン鉱を含むものである。層状の組織をもち褐色の微細な鉱石で、しばしば緑マンガン鉱を挾在しており、全体として非常に低い酸素分圧下で生成された。 2.マンガン鉱石組織の合成 酸化マンガン鉱をゲル法により合成することを試みた。その結果、酸化マンガン鉱の場合も、菱マンガン鉱と同じような縞状組織、リ-ゼガングリングと球状組織が容易に合成されることが明らかになった。しかし、球状の粒子には放射状の組織ではなく、同心円状の組織が観察された。これは天然に見られる球状二酸化マンガン鉱石の組織と極めてよく似ており、これらがゲル中へのマンガンイオンの拡散によってできる可能性を指摘できる。
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