本年度の計画は、 (1) 超高圧下での高温発生方法を確立すること。 (2) このシステムを用いて、MgO-SiO_2-H_2O系における含水高圧相、特にPhaseBの安定領域を明らかにするという2点であった。このうち (1) の高圧下での高温の安定発生に関しては、25GPaの圧力のもとで2400℃を越える超高温を発生することが可能となったが、超高温を安定に持続させるためには今後さらに加熱システムの改良が必要である。 (2) の含水高圧相PhaseBの安定領域を明らかにする実験に関しては、現在までのところ約25GPaまでの圧力において定性的にではあるがその安定領域を押さえることが可能となった。具体的に明らかになったPhaseBの相関係は、 (a) PhaseBは圧力22GPa付近において、γMg_2SiO_4 (スピネル相) MgO (ペリクレース) そして水に分解することが初めて明らかになった。さらに (b) PhaseBの分解圧力近傍 (22GPa) において、この相の融解開始温度が大幅に低下し、1700℃程度になることも明らかになった。以上の実験結果は、未だ予備的なものであり、半定量的なものではあるが、これはマントル深部のダイナミックスに大きな影響を与える可能性が強い。すなわち、沈み込むプレート内部の水は、上部マントル深部及びマントル遷移層内部では、PhaseBの結晶水として保持されているが、プレートの沈み込みとともに遷移層の最下部でPhaseBが脱水分解し遊離したH_2Oを生ずる可能性がある。このようにして生じたH_2Oは深部マントルでのインコンパティブル元素の移動と濃集をもたらす、Motasomatic fluidとして作用するかも知れない。
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