研究概要 |
火山成塊状硫化物鉱床を伴う塩基性岩として,下川塩基性岩,日立変成岩類および三波川変成岩類中の火山岩類を原岩とする変成岩をとりあげ,地質調査および試料採取を行い,試料の主成分・微量成分分析を実施したところ次のような結果が得られた。 1)下川塩基性岩はすべてN型MORB(海嶺岳成岩)に属するが,現世の多くのN型MORBの低イオンポテンシャルLIL元素の量に比べて,下川のそれが高い値を示している。これは海底変質作用または泥質堆積岩により汚染の結果と考えることができる。これと同様な現象はカリフォルニア湾のGnaymus Basinにも見ることができる。 2)日立変成岩類中には酸性〜中性〜塩基性火山岩類を原岩とする変成岩類が含まれる。その地球化学的特徴からカルクアルカリ岩,ボニナイトおよび背弧玄武岩からなることがわかった。 3)関東山地三波川変成岩類中の塩基性片岩の多くは,N型およびT型海嶺玄武岩であり,そのほか海洋島アルカリ玄武岩および海洋島ツレアイトを含むことがわかった。 4)大川,日立および三波川の岩石はそれぞれ,海洋底変質作用あるいはこれに加わった広域変成作用により,化学組成が変化している。主成分元素のうち,変動が激しいのはNa_2D,K_2OおよびCaOであり,FeO^*,MgOおよびScO_2は比較的変化が少い。また変動の激しい微量元素はSr,Rb,Baなどで,Nb,Ti,Yなどは変動が少い。これら変動の少い元素の量的関係をよく解析すれば,地質時代の火山岩類を源岩とする変質岩および変成岩のテクトニック・セッティングをかなり正確に推定することができる。
|