千葉県嶺岡の蛇紋岩体を調査した結果、塊状あるいは脈状をなす多数のローディン岩が認められた。これらの中には、その中心部に斜長石、角閃石、斜方輝石よりなる比較的新鮮な粗粒の角閃石斑レイ岩が観察できるものもある。斑レイ岩は蛇紋岩との境界面に近づくにつれて変質が進み、ローディン岩の鉱物組成に徐々に変化している。この変質帯を変質の程度によって、1)弱変質ゾーン(斜長石、角閃石、カミングトン閃石よりなる)、2)トムソン沸石ゾーン(トムソン沸石、ブドウ石、角閃石、カミングトン閃石、緑泥石)、3)ブドウ石ーハイドログロッシュラーゾーン(ブドウ石、ハイドログロッシュラー、カミングトン閃石、緑泥石)、4)ハイドログロッシュラーゾーン(ハイドログロッシュラー、緑泥石)の4つのゾーンに分けた。またこれら変質帯中には、Caに富む鉱物よりなる細脈が多数見られ、1)のゾーン中ではこれら脈に沿って2)、3)のゾーンの生成が認められた。このような交代変質作用が体積一定で行われたと仮定し、元素の移動を調べた結果、変質の進行に伴ってAlとOは移動しないが、CaとHが増加し、Si、Fe、アルカリが減少することが明らかになった。これをもとに、斑レイ岩を構成する鉱物が変質してゆく過程(斜長石はトムソン沸石、ブドウ石、ハイドログロッシュラーに、角閃石はカミングトン閃石、緑泥石に、そして斜方輝石は滑石に変わる)を、酸素量を一定として化学反応式を用い示した。 変質が進んだゾーン中に見られるハイドログロッシュラーの含水量は、Ca_3Al_2(SiO_4)_<3-X>(O_4H_4)_Xの2Xの値で、3)のゾーンの1.8前後から、4)のゾーンの2.3前後の値に増加し、変質の進んだゾーン中のものほど水の量が多い結果が得られた。 以上得られた結果をもとに、鉱物と熱水との間の交換平衡に関する実験を進めてゆきたい。
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