千葉県の嶺岡地域の蛇紋岩体中に産する塊状の角閃石斑レイ岩の外周部に、ロ-ディン岩への交代変質過程を示すゾ-ニングが認められた。変質は斑レイ岩の内部から周囲の蛇紋岩に向かって進んでおり、変質帯を1)弱変質ゾ-ン、2)トムソン沸石ゾ-ン、3)ブドウ石ーハイドログロッシュラ-ゾ-ン、4)ハイドログロッシュラ-ゾ-ンに分けた。体積を一定とし、各ゾ-ンを化学的に検討した結果、ロ-ディン岩生成に重要なCaは、斑レイ岩中の角閃石からと、蛇紋岩化の過程でカンラン岩から供給されたことが推定された。一方、ロ-ディン岩の主構成鉱物であるグロッシュラ-ハイドログロッシュラ-系ザクロ石の含水量は、最も変質した4)のゾ-ン中のものの方が、その内部の3)のゾ-ン中のものより多い。そのため、水を含まないグロッシュラ-を低温で熱水処理し、ザクロ石中のシリカと水との交換実験を行い、ロ-ディン岩化の進行に伴うザクロ石の含水量の増加について検討した。まず、水を含まないザクロ石を、100Mpa下で660℃あるいは695℃の温度で熱水合成した。生成するザクロ石の結晶化度を変えるため、合成温度での保持時間を0分、5分、2時間、14時間、6日間とした。これらを用い450℃および350℃で52〜97日間熱水処理を行った。この結果、保持時間が長く結晶化の進んだザクロ石はほとんど変化しなかったが、保持時間の短い(0分、5分)ザクロ石は今回の処理条件でもハイドラスになった。従って、低温では含水のザクロ石の方が安定であり、また結晶化の進んだザクロ石でも地質学的な時間で考えると、構造中の[SiO_4]が低温で[O_4H_4]と交換する可能性があることを示唆している。その結果、4)のゾ-ン中の含水のザクロ石は、ロ-ディン岩化作用に関与する熱水の温度の低下に伴って、すでに生成していたであろうザクロ石の含水化によって生成したものと考えられる。
|