研究概要 |
以下の7項目に関する研究にもとづき,遺伝子地図の比較による霊長類の核型進化に関する基礎的研究を試みた。1.カニクイザル(Macaca fascicularis)合計297個体についての集団細胞遺伝学的研究を行なった。2.体細胞遺伝学的手法によるカニクイザルの遺伝子マッピングを行ない、カニクイザルTS(チミジル酸合成酵素)遺伝子を担う染色体を特定した。3.これまでに報告されている同じマカカ属のアカゲザル(M.mulatta)の核型と遺伝子座とを参考にして、カニクイザルの染色体構成の規準化を行なった。4.カニクイザル150個体について、ヒト染色体脆弱部位を発現させる3培養条件下(葉酸不含MEM培地、ヂスタマイシンA24時間添加、ブロモデオキシウリシン24時間添加)で培養し調べた。この結果、10以上の脆弱部位を見出した。5.ヒトの遺伝子DNAをプロ-ブとしたin situ hybridization法を応用して、霊長類の遺伝子地図作成を試みた。ヒトY染色体特異的DNA(DYZ1)については、オランウ-タンの端部着糸型染色体の着糸点近傍に強いシグナルが見られたが、Y染色体にはDYZ1はハイブリダイズしないことが確かめられた。これに対して、カニクイザルには、ハイブリダイズする部位は見られなかった。C4遺伝子座については、カニクイザルについてのみ調べたが、バンド・バタ-ンからヒトの第6染色体に対応すると考えられる染色体の短腕中部にシグナルが見られた。6.南米原産のリスザル(Saimiri sciureus)44個体の赤血球酵素(ACP、ADA、ESD、GPT、PGD、PGM)、血清タンパク質Gc、Tf、ミトコンドリアDNAの変異を調べた。7.霊長目に近縁のツパイ目について染色体構成を比較し、カニクイザルにおけるのと同様の方法で、マウスFM3A細胞との雑種細胞を作った。ツパイ細胞でも、ク-ロン・パネルの分析により、HPRT、TK、TSの遺伝子を担う染色体を特定した。
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