ジャワ島のソロ河河畔にあるサンブングマチャンからは、ソロ人に属すると思われる化石人類の頭蓋(1973年発見、Sambungmacan 1)のほか、日イ合同隊(代表者:日本側、渡邊直經;インドネシア側、D.KADAR)が1977年に行なった現地調査にともなって、著しく化石化したヒト脛骨骨幹片が出土している。しかし、いずれも表面採集品であって、その出土層準は明らかでない。本研究では、当地区からin situで採集された化石骨の分析を行ない、同じソロ河流域にある化石人類遺跡であるサンギランとトリニ-ルから発掘された化石資料に関する化学分析デ-タとの比較などをとおして、サンブングマチャン出土人類遺残、とくに脛骨化石の地質年代をについて若干の考察を試みた。 1977年の調査でKabuh Formation相当層の下部〜底部から採集された動物化石資料について、前年度に引き続きフッ素分析を行なった結果、固結した砂礫層出土の骨では、平均2.12%(標準偏差0.26%、n=11)、礫層産のものでは平均2.37%(標準偏差0.26%、n=9)であった。この値はサンギランやトリニ-ルのKabuh層下部〜底部にかけての化石が示すフッ素含量に匹敵する。また、リン含量との比(100*F/P_2O_5 ratio)をとっても同様であった。 問題のヒト脛骨片のフッ素分析値2.37%は、サンブングマチャンKabuh相当層下部・底部出土骨の呈するフッ素含量の範囲にはいるので、この層準に由来するとすれば、年代的にはジャワ原人に対比される可能性が高い。サンブングマチャンを含めたソロ河流域の第四紀地質に関しては1987-88年に再調査され、新たな化石資料が得られているので、今後、フッ素以外の元素の分析も併せて、他の層準の検討を行なう必要があろう。
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