昭和63年度の補助金交付が第二次分として10月末に内定の報せがあり、その後の月日が少なかったため充分な進展はなかったが、海洋マントルとして当博物館に保管されているハワイのマントル物質と島弧マントルとして愛媛県西条市のアルカリ玄武岩中のマントル物質を採集し研究した。 ハワイの岩石は、第一段階としてかんらん岩だけを研究した。かんらん岩は内部の組織から2種類に分類できた。1つは粗粒なもので、単斜輝石に乏しく全岩としてナトリウムが乏しいかんらん岩である。他のものは細粒なもので、単斜輝石やナトリウムに富んでいる。かんらん石やスピネルの化学組成にも両者で違いがある。前者はマグネシウムに富むかんらん石とクロームに富んだスピネルを伴い、後者は、鉄に富んだかんらん石とアルミニウムに富んだスピネルを伴う。このような鉱物や全岩の化学組成の違いは、細粒なものが初源なもので、粗粒なものは細粒なかんらん岩が部分熔融して残されたものと解釈されよう。また、これらの岩石の温度をいろいろな方法で測定したが際立った違いはなく今後の課題と言えよう。 愛媛県西条市の岩石は今までに研究されてきたものである。今回は、薄片製作と顕微鏡鑑定に留どまったが、今までに報告されていなかった種類が豊富に観察された。それらは、グラニュライトや周囲の三波川変成岩である。平成元年後に、これらの岩石の鉱物分析や年代測定を予定しており、西条市の地下の岩石分布がより一層詳しく解明できると思われる。
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