研究概要 |
平成元年度研究計画の内(1)については,昨年度に引き続き,液体He温度における量子化特性(SET効果)を観測するため,低温実験装置及び外部端子による電圧・電流測定回路の準備を急ぎ,完了した。 一方昨年度の研究成果および今年度研究計画(2)によって,ガラスまたは溶融石英の絶縁物基板上の(50μm×50μm)程度の小面積部分に高真空中でPtのような高融点金属を蒸着した場合,蒸着条件や電極間に印加する電界の大きさによって,島の平均直径が5〜7nm,島間隔が1〜2nmの島状構造の金属超薄膜が得られることが,電子顕微鏡による観測で判明した。この島状構造薄膜は微細なトンネル接合の直列並列の集合と見做せるので,本研究の目的である量子化特性の観測を十分期待する事が出来る。この素子を(1)で準備した液体He温度の低温実験装置に装着して電圧電流特性を測定した結果,数個の素子で抵抗の変化が認められたものの,量子化特性は残念ながら未だ観測されていない。 そのため計画(4)で量子化特性の観測されない原因を解明する手段として先ず液体He温度における実験装置および実験方法について検討を行った。同一の装置を用いてNb等の通常の大きさのJosephson接合の特性を測定したところ,正常な超伝導特性が得られたので,実験装置方法等に誤りはないと推定された。つぎに材料の適合性を検討するためPtと同じく高融点金属のPtPd,Niなどの島状構造薄膜を用いてみたが明確な差異は認められない。他に原因としてはトンネル接合の大きさが十分に微細でない事,素子の接続方法が不適当で測定端子との間に不要な容量が挿入される事等が考えられる。今後これらの点を検討したい。また,先頃超伝導金属の島状薄膜を用いてSET効果に似た特性を得た実験結果の報告があった。超伝導金属の微細トンネル接合の方がSET効果を起こし易い事も考えられるので,今後はこの点も考慮したい。
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