1.結晶軸配向や表面構造の印加高周波電力依存性 溶融石英基板上に700℃の堆積温度の下で、印加高周波電力をOW(LPCVD)から35W(PECVD)まで変化させた。高周波電力の増加と共に、結晶粒における試料表面に対する結晶軸の方向は、OWのLPCVD多結晶Si膜ではほぼランダム方向に、4〜5WでのPECVD膜は強く〈100〉軸に配向し、15W以上では強い〈110〉配向を示した。他の堆積条件は一定の下で、プラズマ発生用高周波電力のみを制御することにより、強い〈100〉および 〈110〉 配向膜を作製できるという結果は、我々の報告が最初であり、堆積方法に関して金沢大学から国有特許を申請した。多結晶Si膜の薄膜トランジスタへの応用を考える場合、ゲート絶縁膜とSiにおける界面準位密度が最も少ない(100)面が試料表面と平行となることが望ましい。 上記プラズマの印加は、多結晶Si膜の表面荒れを減少させることに対しても大きな効果があった。従来の原料ガスの熱分解を利用したLPCVD多結晶Si膜においては、堆積した状態で多結晶となる650℃以上の温度で堆積した時、その表面は荒れ、特に強く配向したSi膜の表面荒れは2000Aに達する。一方、本研究のPECVD多結晶Si膜の場合は、強く〈100〉または〈110〉配向した膜においてさえ表面荒れは30A以下であった。 2.リンおよびボロンのドーピング効果 配向に関しては、両ドープ試料共にドープ量に依存せず、LPCVD膜はランダム配向を示し、35WでのPECVD膜は強い〈110〉配向を示した。表面荒れに関しては、LPCVD膜は荒れが増加し、一方PECVD膜は全ドープ量範囲で平滑であった。電気伝導度に対するドーピング効率は、PECVD膜はLPCVD膜に比較して約2桁大きい。
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