前年度までの研究において、減圧下でSiH_4を含む原料ガスを700℃で熱分解(LPCVD)する時に同時にプラズマを印加した時、溶融石英基板上に堆積した多結晶Si膜の構造は、プラズマ発生用高周波電力の増加と共に、ランダム配向から、<100>そして<110>結晶軸配向した多結晶Si膜を選択堆積できることを示した。また、このプラズマを印加した(PECVD)Si膜においては、LPCVD膜に比較して、1.Si膜表面が平滑になること、2.ド-ピング効率が高いこと、3.堆積後の外来汚染に対する安定性が良くなること、などの工業的に有効な効果を持つことを見い出した。 本年度においては前年度の研究を更に進め、堆積温度およびガス混合比(H_2/SiH_4)を変化させた時の配向性について評価を行った。結果として、プラズマを印加した時、<100>または<110>軸への強い配向が観測される堆積温度範囲は、プラズマを印加しない時に比較して高温側にシフトし、またガス混合比は増加(SiH_4の分圧の減少)の方向にシフトすることを見い出した。すなわち、プラズマ印加の構造に与える効果は、堆積温度の増加およびSiH_4分圧の減少による効果と等価であることが判った。この結果は、LPCVD膜に比較してPECVD膜の堆積速度が増加すること、および堆積中にSi膜表面を覆っているH原子の量がプラズマ印加によって減少することが原因となって、表面に吸着されたSi系ラジカルの表面拡散係数の減少によって説明した。種々の印加高周波電力で堆積した多結晶Si膜上に形成されたMOS薄膜ランジスタの電界効果易動度を評価した結果、強い<110>配向をもつPECVD膜が最も高く、ランダム配向をもつLPCVD膜は最も低かった。これらの結果は結晶粒サイズ、配向の強さ、表面の荒れの変化に結び付けられた。
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