本研究では透過型電子顕微鏡により生成される径1〜2nmの微小電子線を用いて、GaAs/AlGaAs、InP/InGaPなどの半導体超格子の界面からの電子回折を行ない、界面に存在する組成変化、欠陥、歪構造などを検出する方法を確立する研究を行なった。研究の経過と得られた成果は以下の通りである。 (1)初年度は、既存の200KV電子顕微鏡の対物レンズを交換して電子線を1nm以下に絞れるようにし、半導体の界面の任意の点からの極微小電子回折が行なえるようにした。 (2)本助成金によりナノ回折図形をテレビにより読み出すシステムを整備し、これをパソコン上のフレ-ムメモリ-に記録し強度解析ができるようにした。 (3)実験として、GaAs/AlGaAs、InP/InGaAs温超格子の界面のナノメ-タ-電子回折を行ない、前者については界面近傍のアルミ組成の変化を定量的に検出することに成功し、後者の試料では界面における格子欠陥を検出する方法を確立した。これらの成果は欧文2報、和文1報に発表した。 (4)半導体超格子からのナノメ-タ-電子回折図形をシュミレ-トするため、当大学の計算機センタ-のス-パ-コンピュ-タ-上に計算プログラムを開発した。 (5)第2年度は、InP/InGaP系歪超格子の界面における歪の検出の実験を行なった。この試料は、電子物性の測定や電子顕微鏡の明視野像より歪の存在が示唆されていたが、本研究ではナノメ-タ-電子回折と暗視野等厚干渉縞法を併用して、界面での格子の曲がりを初めて検出することに成功した。 以上の実験を通じて、半導体超格子界面のナノメ-タ-電子回折の基本的技法はほぼ確立したと考えられる。今後は本研究で開発したシュミレ-ションプログラムを利用して、界面の解析をより定量化するとともに、この技法を合金やセラミックスの接合面などにも応用してゆくことを予定している。
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