本年度の研究目標は光励起CVD法によるダイヤモンド合成である。昨年度のア-ク放電CVD法を用いたダイヤモンド合成は成長速度の増大、膜質の向上等の成果が得られた。これらの結果を検討し、光励起CVD法への適用を考慮した結果、次の2点が重要であることが明らかとなった。(1)放射光を発する光源ランプの選択。光で炭素源のガスを分析する場合、従来では、紫外線ランプを用いる例が多いが、光の光量、強度が不足している。本研究では100Wのキセノンフラッシュランプを用いた。この光源は1フラッシュ光あたり1ジュ-ルという。従来の10^3倍もの光強度と、放射波長は300〜600nmと比較的広い等の特長を有している。(2)炭素源ガスの選択。従来はメタン、アセチレン等の炭化水素系のガスを利用しているが、光分解しやすい、含酸素有機化合物、ここではメチルアルコ-ル、アセトン、ジエチルエ-テルを用いた。これらの炭素源は、上述のフラッシュランプの光で分解することは文献等で明らかになっている。実験条件は、反応圧力760Torr、基板温度600℃、基板直上に設置された光源から毎秒1フラッシュの光が放射される。基板はシリコンを用い、反応時間は1時間である。反応後の基板表面は茶黒色に変色していた。S.E.M.観察では、基板表面には粒状および膜状の生成物は認められず、ラマン分光でもアモルファスカ-ボンとグラファイトの弱いピ-クのみが観測された。この結果は、用いたすべての炭素源に共通していた。その理由として、光強度と単位時間あたりのフラッシュ数の不足があげられる。すなわち、光強度不足はダイヤモンド合成に必要とされている炭素ラジカル密度を充分にしない。またフラッシュ数が1秒1回では、やはりラジカルの生成は充分でないように推定される。従って今後の研究の展開としては【○!1】300nmの発光を有するレ-ザ光を用いる。【○!2】光分解しやすい炭素源の選択と調査等が必要となろう。
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