現在、励起状態の活性種(C、CH、CH_3、C_2等)が、ダイヤモンド合成に重要な役割を果たしていると考えられており、その活性種の生成には、いくつかのCVD法(マイクロ波プラズマCVD法等)が、反応ガスとしては炭化水素等のメタンと水素が主に用いられている。 従来の合成法や反応ガスではダイヤモンドの成長速度は遅く、1μm〜10μm/hである。そこで筆者は、上述の活性種を多量に生成する方法として、高温のプラズマであるア-ク放電に注目し、かつ反応ガスとして含酸素有機化合物(アルコ-ル等)の使用を試みた。そして、合成したダイヤモンドは走査型電子顕微鏡・観察、X線回折およびラマン分光分析によって評価した。その結果、ダイヤモンドの成長速度は約200〜250μm/hの値が得られ、従来法の10倍以上の高速合成が確認された。 また、反応圧力も100〜760Torrと広く、ア-ク電力も約560Wと低い等の特色を有している。上述の分析よりアモルファスカ-ボンやグラファイトがほとんど含まれていない高品質のダイヤモンドであることも明らかとなった。この理由としてアルコ-ル中の水素基OH、や原子状水素H、が非ダイヤモンド炭素成分のエッチングに寄与しているものと考えられる。 一方、光励起CVD法によるダイヤモンド合成では、アモルファスカ-ボンの生成は認められていたがダイヤモンドの合成は成功しなかった。これは光強度の不足のため、必要なラジカル密度が充分でなかったためと思われる。 以上、「有機化合物(アルコ-ル等)を用いたCVD法によるダイヤモンド薄膜の高速成長」の2年間の研究は所定の目的を一応達したといえる。
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