赤外線放射加熱装置IRー1000(サーモ理工(株))を購入した。真空ポンプと石英管を組み合わせ電子顕微鏡観察に用いる試料を加熱する装置を製作した。昇温テストを繰返し、900℃までの任意の温度に1分以内に昇温し、保持するコントロールプログラムを開発した。 まず900℃付近の温度の必要な形状記憶合金TiーNiの溶体化処理を試みた。延べ3週間に渡っての処理で信頼性や再現性を確認した。白金を約18nm蒸着した試料を700℃まで加熱し、目的であるシリサイド化反応に応用して、白金がほとんどシリサイド化することを確認できた。 次いてこの白金のシリサイド化反応で400℃、500℃と2種の温度で反応時間を変化させた5種の試料を作製し、透過型電子顕微鏡で観察した。この成果の一部は、昭和63年8月の米国電子顕微鏡学会(ミルウォーキィ)で報告した。500℃のものでは反応時間10分、20分の2試料とも反応は終了していたが、400℃のものは、10分20分30分のもの各々反応の進行の違う結果が得られた。酸化物の層が含まれるので反応の進行を厚さで示すのは多少困難があり、反応の進行の評価について現在光電子スペクトルなどと四端子抵抗測定法と用いて検討している。 反応の妨げとなるSi表面の初期酸化物の厚さについてフッ酸ーフッ化アンモニウム緩衡液を用いて蒸着装置へ入れる直前に一度酸化物膜を除いた試料と除かなかった試料で白金ーシリコン界面の中間に存在する酸化物膜の厚さの違う試料が得られることを確認した。 酸化物膜の厚さは薄い方が容易にシリサイド化反応が起ることが予想されるので、蒸着前に酸化雰囲気中で加熱し酸化膜の厚さを変化させることで、反応開始温度、反応速度への影響を詳しく調らべる予定である。
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