体の中で、血液総量のわずか数パーセンとだけが組織の中の毛細血管の中にあるにすぎないが、血液から組織へ酸素、栄養素が、また、組織から血液へ炭酸ガスをはじめとする老廃物が交換され人間の生理的活動の根源的役割を果たしているのはこの毛細血管だけである。 本研究は、この毛細血管の血液の動態に関する情報をレーザの特性を利用した動的レーザ散乱法を使って無侵襲で入手できる方法を確立することである。この方法によれば、従来、サンプルされた血液の性状でしか判断できなかった筋肉組織内の血液内の血液の流速、血液量、赤血球の性状などについての情報を入手できて、血液に関する病態の診断ないしは病態をモニターすることができる。 本研究はまず、皮膚組織表面からの入射したレーザ光の散乱光のスペクトルを解析することで、ランダムなネットワークを作る毛細血管中の血液の平均流れ速さに関する情報は散乱光パワスペクトルの一次のモーメントに密接に関係することを理論的に明らかにし、この理論的解析に基く情報の入手をポリスチレン球を赤血球のモデル物質としてモデル的流れ場を作って散乱光のパワースペクトラムを観測しその解析から流れ早さの大きさとパワースペクトルとの間に明確な相関のあることを明らかにした(FULCOM88において発表) また、赤血球の数密度に関する情報は、散乱光バワスペクトルの平均強度と密接に関係してることを理論的に明らかにし、この理論的解析に基く情報を、同じく赤血球のモデル物質とモデル的流れ場を作って散乱光のパワースペクトラムを観測しその解析から赤血球の数密度に対応する情報が得られることを実験的に明らかにした。(SICE学術講演会において発表予定)
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