研究概要 |
a-c:H膜に紫外光を照射した際に生ずる膜厚の減少(光エッチング)を光記録に利用する基礎研究で、紫外レーザ光を用いたホログラム作製と再生、さらに記録性能と膜の物性との関連についての理解を得ることを目的とした。 まず,ホログラム作製については、He-Cdレーザ光源からの紫外レーザ光を分割し光路差を持たせた二光線とし、その干渉を膜上に発生させ強弱を凹凸の形で記録した。再生は可視He-Neレーザ光及びAr^+レーザ光を用い、膜を透過したそれぞれの一次回折光の角度が理論的予測と一致することで、干渉が膜にホログラムとして記録されていることを確認した。これによってa-c:H膜にレリーフ型ホログラムの直接記録が可能なことを始めて示すことができた。ただ、回折効率は理論的予測よりかなり低かったが、レーザ光の偏光特性や干渉作製時の光学台の振動などの影響が考えられるので、今後検討する。 空気中の熱処理等により組成を種々変化させた膜について光エッチングの発生の様子を比較した実験から、膜中のC-H結合やC=O結合などの濃度について、光記録時の感度の向上に役立ちそうな指針を得た。この結果によれば、記録の再生は透過型ではなく反射型ホログラムとして利用した方が回折効率が高くなると推測されるので、感度の問題と合わせて利用形態についても来年度の研究の展開の中で十分検討する。 さらに、紫外光照射によって生ずる膜のフォトルミネッセンスについて、C=O結合やC-H結合濃度の異なるいくつかの場合の励起スペクトルを測定し、光エッチング発生効率の励起スペクトル(光子エネルギー依存性)と比較したところ、両結合は発光中心を形成しその格子緩和と光反応によるエッチングの発生プロセスは関連している可能性を示唆する結果を得た。この結果も来年度の研究の展開に役立つと考えられる。
|