本研究は、モアレ超解像蛍光顕微鏡法の理論的背景の確立とその実証システムの試作、結像特性の計測、実用性の評価等を目的としている。 研究経過としては、まず初年度(昭和63年度)においてLukoszとMarchandによる走査格子マスクによるモアレ超解像法を拡張して蛍光顕微鏡に適用する為の理論解析を、一次元および二次元の投影型マスクについて試みた。この結果、提案する投影型のモアレ蛍光顕微鏡は共焦点(コンフォ-カル)蛍光顕微鏡に類似した特性を持ち、面内方向における超解像性とともに光軸方向への真の3次元解像力を持つことが結論された。これに基づき、落射蛍光顕微鏡の改造に着手し、励超光照明系と観察光学系内にそれぞれ振幅格子型の物理マスクとマスク可動機構を組み込んだモアレ蛍光顕微鏡を完成させた。この装置に能動型画像処理の手法に基づく二重マスク移動型再生法を適用し、一次元マスクによる再生実験を行った。生物試料等による実験の結果、明かに真の3次元解像力を有する事が判明した。一方投影型モアレ蛍光顕微鏡がマスク間の位相ずれに敏感で、コントラスト反転が生じるため、この理論解析と補正方法の提案を行った。 引き続き次年度(平成元年度)においては、二次元の投影型モアレマスクによる再生を試み、一次元マスクと同等な3次元解像力を確認した。さらに異なった焦点はずれ量の再生像をもとに、試料の3次元スペクトル計算を試み、系の3次元光学伝達関数を評価した。また光学系を明るくする目的で、位相格子型マスクの検討を行った。現在の所、励起光光学系の不適合の為、当初予定した1μm程度のマスク投影が出来ず超解像性は未確認である。励起光光学系の改造および再生時間の短縮等をはかることによって、実用的なシステムとして使用可能であると判断されるものである。
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