研究概要 |
63年度の研究では衝撃波背後の流れ場の特徴を種々の手段を用いて調べることに主眼を置いた。二相媒質を伝播する衝撃波を作り、その波形を圧力センサによって計測して純粋気体の波形との相違を知ること、フィルムセンサによる衝撃波管壁面への熱伝達量を測定することによって潜熱の授受の大きさを調べること、熱線温度計(熱線風速計の使用形態の一つ)によって流れ場中央部での熱伝達量を求めて相変化を予測すること、などを実施した。そして当初の予想をある程度裏付ける結果、すなわち、衝撃波背後の蒸気は一時的に凝縮を起こし得るという傍証を得ることができた。 これまでの結果をまとめると(現段階では一部推測の部分も含めて)蒸気凝縮の過程には熱力学で扱う平衡条件から規定される特性時間よりはるかに長い時間をかけて進行する相変化の過程がありそうだ、という知見(まだ予想というべきか)を得たことである。蒸気凝縮の実体たる液滴あるいはクラスターを同定できるためには分光分析法に頼らざるを得ないが、これの計測は64年度に行う予定である。 衝撃波背後の流れ場のシミュレーション解析は相変化のある場合にはどうしてもモデル方程式の導入が避けられず、従来あまり成功していない。いずれもF.E.Marble(注)の仕事を出発点として支配式を構築しているが検証の対象となる実験成果が少ないこともあり改善が困難である。従ってこの研究でも衝撃波背後の流れ場をモデル化する入口段階で未だ模索中である。これも64年度の課題である。 (注)F.E.Marble:Some Gasdynamic Problems in the Flow of Condensing Vapors,Astro.Actd.Vol.14,1969,pp.585-613
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