本研究では、1)衝撃波管を用いて実験を行いベンゼン-N20系の酸化反応機構について検討を行った。Arで希釈したC6H6/N20(0.1/1-2%)の混合ガスを反射衝撃波で加熱し、反応物N20の4.5μmおみび反応生成物CO2の4.25μmの赤外発光の時間変化を測定した。実験によって得られたN20の減少速度とCO2の生成速度を化学反応機構に基づくシミュレーションによって得られたものと比較した。その結果、CO2の生成速度は2000K以上の高温においては実測値と計算値は比較的よく一致したが、1700Kより低温で従来報告されている反応機構を用いてベンゼンの酸化反応は説明できず、ベンゼン環の開裂過程において新たな素反応過程が必要なことが解った。また、N20の減少速度の実験と計算結果の不一致からN20とベンゼンまたはフェニルラジカルなどの炭化水素との直接反応によるベンゼン環の開裂過程を推察した。 2)衝撃波管末端に超音波ノズルを設け、ベンゼン-N20系の燃焼生成ガス中でのC20の振動励起の反転分布の状態を10.6μm cw-CO2レーザーを用いて微小信号利得(Gain)として測定を行った。等量のN2およびHeの混合ガスで希釈したC6H6/N20(=1/10-20%)を反射衝撃波背後1500-2200K、圧力約4atmの条件で反応させ、反応ガスをノズルを通して急膨張急冷却し、ノズル中においてGainを測定し、Gainの温度に対する依存性を調べた。その結果、C6H6-N20のGainは1600K付近にピークを持ち、高温になるに従い漸減した。またその結果を、以前に行ったCO2-N2系、CO-N20-H2系と比較し、C6H6-N20のGainの特性を検討した。その結果、C6H6/N20比が化学量論比(=15)もしくはそれ以下ではベンゼン系のGainの値はCO2-N2系およびCO-N20-H2系の半分程度であったが、量論比以上(C6H6:N20=1:20)ではほぼ同程度のGainが得られた。
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