超高速の燃焼は2つの形態の可能性がある。極めて強い乱流による火炎と、衝撃波と干渉し合って高速で燃焼する爆ごうである。強い乱流は伝播火炎の前に適当な障害物をおくことによってつくることができる。障害物によって乱れが強められて全体としての燃焼速度が、したがって発熱速度が増大し、より強い圧縮波を発生する。それはより速い流れ場を形成し、そこにまた障害物があれば乱れは前よりも強められ、燃焼速度はさらに増大する。このように障害物を繰り返し置くことによって極めて高速で伝播する火炎をつくることができた。これまで開放空間中の実験ではこのような高速の伝播火炎は実現されていなかったが、本実験で、適切な形状の障害物とその間隔によっては容易に加速させることができるということを示すことができた。実験では高速度カメラを用いてシュリ-レン法によるこま撮り写真と流し写真を撮影し、圧力センサ-によって圧力を測定し、さらに発光強度を測定した。伝播火炎の著しい加速は障害物後方にできる強い渦が消滅する頃に見られる。その時の火炎はシュリ-レンでは細かい粒状に見え、他の領域の乱流火炎の乱れのスケ-ルと比べかなり小さい。細かい強い乱流燃焼は集合として爆発とみなすことができ、測定した圧力波形と発光強度波形はそれを示唆している。実験では燃料としてエタン、メタン及び水素を用い、少し希釈した酸素と化学量論比に混合した。いずれの混合気でも障害物を繰り返し置くことによって、どんな速度にでも加速することができ、十分加速すれば爆ごうに遷移した。ほぼ同じ条件で比較すると、火炎の加速は定性的には同じで定量的な差は主に発熱量と考えられる。しかし爆ごうの発生にはそれとは違った大きな差が見られた。例えばメタンは火炎速度が1000m/s近くなっても爆ごうが生じないことが多く、「衝撃波+火炎」構造が比較的安定につくられることがわかった。
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