衝撃荷重を受ける機械や構造物の安全設計をするためには、動的な試験で得られる材料の物性値を用いる必要がある。高靭性材料の弾塑性破壊靭性値の評価法としてはJIC試験法がすでに確立されているが、動的な試験においては、塑性変形の影響だけでなく慣性力の影響についても考慮する必要があるので、JIC試験法をそのままの形で適用することは困難である。そこで本研究では、高靭性材料の衝撃破壊靭性値を正確に計測する方法を、動的弾塑性破壊力学を用いることにより確立することもに、簡便で迅速な試験方法を探求することを目的とする。本年度における研究により以下のことが得られた。 1.動的弾塑性破壊力学パラメ-タJ積分の評価においては、数学的取扱いが困難であるので有限要素法などの数値解析を一般に行う必要がある。その際にJ積分の表示式に含まれる極限操作をどのように取扱うかという問題が残されている。そこで、解析解の得られている弾性問題についてJ積分を有限要素解析する際の誤差解析を行った。その結果、従来の極限操作を考慮しない評価法によっても5%程度の誤差でJ積分が求められることが分かった。また、極限操作を考慮した新しい手法を提案した。 2.一般に有限要素解析は長大な計算時間を必要とするので、一点曲げ試験に対して、J積分の簡便評価式を導いた。すなわち、梁の動的理論を用いて導びかれた動的応力拡大係数の簡便評価式に塑性域補正の考え方を適用して拡張し、J積分に対する評価式を求めた。有限要素法による弾/粘塑性解析結果と比較検討し、本簡便式が実用上十分な精度を有していることを確認した。また、本評価式を用いた計測システムを作成し、ぜい性材料による試験を実施し、一点曲げ試験法の有効性について検討を行った。
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