低温複合変形の構成関係の実験的評価 低温用構造材料として多用されているSUS304ステンレス鋼を対象として、おもに液体窒素温度(77K)における複合非弾性変形挙動と、室温と液体窒素温度の迄温度を変化された場合の非弾性変形挙動を実験的に調べ、その挙動を明らかにした。以下に、その結果を示す。 1.液体窒素温度下では、圧縮方向の流動応力の方が引張方向のそれよりも大きく、降状曲面は、圧縮方向に膨らんだいびつな形状をしている。 2.引張り予ひずみ後にねじった場合、流動応力の上昇(潜在硬化)が観察された。また、圧縮後のねじり、ねじり後の圧縮およびねじり後の引張りについても同様の現象が観察され、その定量化が成された。 3.室温で引張予ひずみ後、77Kで引張り、圧縮およびねじり方向に再負荷する実験を行った結果、室温で引っ張った後にも、低温下では圧縮方向に硬い異方性と負荷方向変化に伴う潜在硬化が生じる。 4.SUS304ステンレス鋼は、77Kにおいて顕著な粘塑性挙動を示し、引張り圧縮クリ-プ試験の結果、粘性挙動の顕著なのは、非弾性ひずみが3〜8%の間の加工硬化が小さくなる領域であり、一方、変形初期や流動応力が大きく加工硬化率も大きい高ひずみ高応力状態では、クリ-プ変形はほとんど生じない。 今後の課題としては、液体ヘリウム温度(4.2K)での複合負荷試験の継続と、77Kでの非弾性変形、特に粘性変形とマルテンサイト相生成の関係を実験的に調べる必要がある。
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