セラミックスは、耐熱性や耐食性などに優れた性質を持っているが、靭性に乏しい。そこで、セラミックスと金属を接合して強度の高い接合材を製作する研究が最近盛んに行われているが、接合材には両材料の線膨張係数の相違のよって残留応力を生じる。また、セラミックスを製造したり機械加工する際にも残留応力を生じる。この残留応力はセラミックスの強度に大きい影響をもたらすので、セラミックスの残留応力の測定法の確立が学界のみならず工業界からも強く望まれている。X線回折による応力測定法は、多結晶材料の局所の残留応力を非破壊的に測定できるという長所を持っている。特にガウス曲線法にみるX線応力測定は、他の方法に比べて応力値を迅速に精度よく測定できる有効な方法である。 X線によって応力値を精度よく測定するためには、まず測定に用いる回折面を選択するとともに、応力計算に用いるX線弾性定数のを実験的に決定する必要がある。そこで、本研究ではまず、最も広く用いられているセラミックスであるアルミナの応力値およびX線的弾性定数の回折面依存性を実験的に明らかにし、その結果をVoigtとReussの多結晶体の変形機構を示す理論値と比較検討した。その結果、CoKα_1線を用いた(410)面のX線的弾性定数の実験値が理論値とよく一致するのみならず、(410)面は回折角が最も高いので、応力値の測定精度が最もよいことが明らかとなった。 また、窒化けい素と炭素鋼S45Cの接合材の残留応力分布をガウス曲線法によって測定し、結果を有限要素法による計算値と比較した。その結果、接合材界面には界面に垂直方向に最大引張り応力を生じていることがわかった。また、測定値は計算値に必ずしも一致しないが、応力分布の傾向はよく一致することが明かとなった。
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