本年度はまず、モ-ドIIの破壊靱性値の評価法について検討した。モ-ドIIの破壊試験は、曲げによって行なわれることが多く、その場合、上下破面の接触の状態を正確に把握することが重要となる。本研究では、強い異方性を有する構造物の接触問題が解析できる境界要素法プログラムを昨年度の研究で作成し、この接触状態の解明を試みた。その結果、接触部の範囲、接触力の分布などの点で、妥当な結論を得、モ-ドIIでの破壊靱性値評価が可能となった。実際にモ-ドIIの破壊靱性値を評価した結果、モ-ドIIの破壊靱性値は、板厚の影響を強く受けることが明らかとなった。これは板の成形時の繊維とレジンとの接合状態が板厚によって変化し、これがせん断強さに大きく影響するためである。最後に混合モ-ドでの破壊試験を試みた。繊維の配向を変えることにより、モ-ドIからモ-ドIIIまでの混合モ-ド状態を作り出すことのできる試験片を考案した。混合モ-ド状態を検討するため、三次元有限要素法解析を行ない、KI、KII、KIIIを分離を個々に評価した。その結果、混合モ-ド状態が実現していることが確認された。しかし、モ-ドIIIの成分が予期したよりも小さく、モ-ドI成分のみが卓越した状態になることが分かり、実験には至らなかった。現在、米国、ヨ-ロッパ、日本が共同でこの問題を取り上げる構想が進んでおり、本研究申請者もその一員として協力して行きたい。
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