本研究では、透明なガラス試験体中に圧電素子を埋め込み、これに電気的パルスを加えて変形させる事により、き裂先端のAE波発生挙動を模擬した。これにより発生した疑似AE波を現有の応力波可視化装置で可視化し、さらに可視化像のデータをコンピュータに送って定量的に解析した。 実験は板厚20mmのパイレックスガラスに、スリット欠陥を導入し、その先端に厚み振動型のPZT圧電素子を埋め込んだものを試験体とした。これに現有の超音波探傷器を用いて約400Vのスパイク電圧を与え、スリット欠陥先端が急激に開口するような強制変位を与え、モードI型破壊を模擬するとともに、そこから疑似AE波を発生させた。 このAE波を現有の応力波可視化装置で可視化するとともに、画像信号を購入したカラーエンコーダを通してコンピュータに入力し、可視化されたAE波の音圧波形解析を行った。また、AE波を共振型と広帯域型のAEセンサーで受信し、音圧波形との比較を行った。 得られた主な新しい知見を以下に列記する。 1.スリット先端から放出されるAE波には、開口型であっても縦波と横波が存在し、それらは先端を中心に放射状に広がって行った。 2.放射状に広がる縦波と横波の音圧分布は、進行方向により異なり、特にスリット面の延長方向に進む縦波には発生時に遅延が生じた。 3.試験片上のAEセンサーからは、可聴域からの広い周波数成分を有する突発型AE波を受信することができた。 4.可視化像からの音圧波形解析の結果とAEセンサーの受信波形とを比較する事により、突発型AEの大部分は試験片内部での反射波であることがわかった。また、広帯域型のセンサーの方が音圧波形に近い受信信号が得られることがわかった。
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