射出圧縮成形は通常の射出成形における形状不良や配向の不均一性を改善する方法として注目されているが、圧縮工程の効果については必ずしも明確でなく、成形条件の設定は試行錯誤によるところが大きい。本研究では最も基本的な円板の成形を取上げ、圧縮工程が形状不良、配向特性及びこれらに関連する光学的異方性、強度異方性等に及ぼす影響を実験的に明らかにした。本研究の結果を要約すれば以下の通りである。 1.圧縮量を自由に設定できる負荷装置を製作し、これを通常の射出成形機に組込んで成形実験を行なった。ここで金型には圧力、温度センサを埋込み、キャビティ内部の樹脂の挙動を把握できるようにした。 2.樹脂としては成形特性の異なる代表としてポリカーボネートとポリスチレンを選び、まずそりやねじれなどの形状不良について調べた。その結果圧縮工程を適切に設定することによりかなり広い成形条件で良好な形状が得られることがわかった。また形状不良にはキャビティ内部の圧力分布の影響が支配的でこれを均一化することが重要であることを確認した。 3.成形品の表面層と中央部(コア層)では流動、凝固過程の相違により配向が異るものと考えられる。そこで成形品より表面層とコア層の薄片を切り出し、それぞれに対して光学的異方性及び強度異方性を測定した。一方残留応力を表面除去法(ザックス法)によって測定し、これが光学的異方性に及ぼす影響をもとめた。そして、これらの効果の総合として、成形品の最終的な光学的異方性を推定した。 今後、実験精度の向上をはかって結果を定量化すると共に、数値解析により個々の成形条件が成形品の特性に及ぼす効果を把握し、数値実験を併用して精度向上の方向を明らかにすることが必要であろう。
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