本研究で得られた成果は、つぎのように要約される。 1.計数規準型1回抜取検査では、サンプルサイズと合格判定個数がともに整数であることから、予め定められた生産者危険と消費者危険の名目値を完全に実現することは極めて困難である。そこで、生産者側と消費者側がそれぞれ両者の名目値からのズレにいだいている主観的な感覚をメンバ-シップ関数で表現し、両危険の実現値の均衡をとるとのファジィ理論を応用した新しい設計法を提案した。 2.上記設計法では反復計算が用いられており、設計手順が多少繁雑であったのを改良し、反復計算法によらない簡易設計法を確立した。 3.抜取検査の設計において、所与の品質基準を満足することに加えて、サンプルサイズをできるだけ小さくすることが要求される。そこで、できるだけサンプルサイズを小さくしたいとの要求に対しても、それを主観的な感覚としてとらえ、メンバ-シップ関数で表現することにより、品質基準とサンプルサイズに対する満足度を同時に最大化する、より一般化したファジィ設計法を提案した。 4.計数規準型1回抜取検査のファジィ設計法を計量規準型1回抜取検査に対して展開した。まず、寿命分布に指数分布を仮定した信頼性試験において、個数打切り計量規準型抜取検査を対象として取りあげ、生産者危険と消費者危険の名目値をファジィ数としてとらえ、両危険の実現値の均衡をはかる簡便な設計法を提案した。 5.ついで、時間打切り試験を対象として、寿命特性の良否をファジィ集合で表現することを試みた。そのさい、生産者危険と消費者危険の解釈が従来のものとは異なり、ベイズ流の定義を採用した。このように、寿命特性の良否の定義にファジィ理論を適用することにより、より柔軟性の高い信頼性試験方式の設計が可能となった。
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