前年度は主として砥石摩耗の観点から、このラッピング現象を追究した。本年度は先ず、砥石と工作物の静的な弾性接触モデルを設定し、Hertzの弾性接触理論に基づき加工精度のうち平坦度について理論解析を行い、実験によってこの理論の妥当性を考察した。更に固定砥粒方式ラッピングにおける仕上面粗さの形成機構を検討し、その特徴を明らかにした。次に砥石と工作物の接触圧を一定と仮定し、この精度ラッピングにおける工作物平坦度の変化過程をシミュレイトするソフトウエアの開発を試みた。 本年度の研究成果を要約すると、次のとおりである。 [1]Hertzの弾性理論により弾性接触する2物体の接触圧力分布が一様となる表面曲率を求めると、この曲率は加工面平坦度とかなり良い一致を見る。したがってこの平坦度を左右する因子は、砥石の弾性係数である。 [2]固定砥粒方式ラッピングにおける表面粗さの形成機構は3種類に大別できる。 (1)転写型 (2)中間型 (3)Burnish型 これら3型態を左右する因子は、粒度と研磨荷重である。固定砥粒方式ラッピングで支配的なものは(1)、(2)であり、(3)を如何に実現するかが、最大の技術課題である。 [3]砥石と工作物の相対運動軌跡は、加工精度を左右する大きな因子である。特に平坦度はこの相対運動軌跡によって影響を受け、例えば単純回転研磨軌跡パタ-ンの下では、必然的に平坦度が劣化することが、本研究で開発したシミュレ-ションによって明らかになった。
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