イオンビ-ム加工によってダイヤモンドバイトの表面に薄い(5nm以下)照射損傷層が生じ、これが切削特性に悪い影響を及ぼすことも考えられる。そこで、まずミクロト-ムを用いてイオンビ-ム加工で鋭くしたダイヤモンドナイフでエポキシ樹脂で胞埋した肝臓を切削し、その切削特性について検討した。続いて水素プラズマ処理でこの照射損傷層を除去したり、低エネルギ(200eVくらい)のArイオンを用いたイオンビ-ム加工あるいはイオンビ-ム加工にダイヤモンドを加熱しこの照射損傷層を薄くすることなどについても検討した。また、ネガティブランドの形成に関連して、イオンビ-ム加工の進行に伴う加工物の形状変化の計算機シュミレ-ションについても検討した。これらから次の結論を得た。 (1)800℃でダイヤモンドバイトを水素プラズマ処理することで、イオンビ-ム加工により生じたダイヤモンドバイトの表面の結晶性を回復することが出来る。また、この処理によりその微小強度も向上することが出来る。 (2)イオンビ-ム加工時にダイヤモンドを400〜800℃に加熱することにより損傷層の発生を防止できる。 (3)1.0keVと0.2keVのArイオンを用いたイオンビ-ム加工でダイヤモンドナイフの切刃の丸み半径を10nm程度まで鋭くできた。また、これを用いてエポキシ樹脂で胞埋した肝臓を薄く切削することができる。 (4)計算機シュミレ-ションにより、ネガティブランドの角度や切刃を鋭くする条件を検討できる。 (5)プラズマ処理したダイヤモンドバイトを用いてアルミニウムの超精密切削を行ったが、ダイヤモンドチップのシャンクへの取り付け処理が悪かったため満足のいく結果は得られなかった。 今後は水素プラズマ処理をしたダイヤモンドチップのシャンクへの取り付け処理などを検討する必要がある。
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