本年度は計算機シミュレーションに基づいた制御アルゴリズムと切削力測定システムの検討を中心に研究を行なう予定であったが、シミュレーションプログラムを購入計算機に適合させる作業に手間取り、シミュレーションによる検討が十分に行なえなかった。そのため、実験的検討を平行させて研究を進めた。主軸回転数変動信号による切削トルク測定については、エンドミル工具を用いて種々の切削条件で切削実験を行ない、回転数変動の振幅が切削トルクに比例することを明らかにし、制御用の信号として使用できることを確認した。ただし、比例関係が回転数や切削幅の影響を受けることなど実用上の問題点も明らかになった。予見制御アルゴリズムに関しては、予測切削力変化パターンをもとにNC装置に与える送り速度指令値をあらかじめ算出する部分について検討を行なった。この問題は、設定最大切削力を超えないという制約条件のもとで加工時間最短を実現するように、実現可能な値の範囲で入力値系列を求める問題である。基本的には逆伝達関数法の考え方になるが、解析的に最適解を求めるのは困難なため、ダイナミックプログラミング的な逐次計算手法を開発した。また、この計算手法の有効性を確認する目的で実験を行なった。マシニングセンタの送り特性を測定し、それを取扱の容易さを考えて2次振動系で近似した。各種工作物形状を想定して、送り指令値を計算し、実際の送りテーブルの運動を測定した。この結果シミュレーションで予測したテーブルの送り速度の変化とほぼ一致する結果が得られた。次年度は、本年度の結果をもとに、切削中の切削力の測定値および実テーブル送り速度値をフィードバックし、送り速度指令値を修正する部分のアルゴリズムをシミュレーションプログラムを利用することによって検討するとともに、全体制御システムを構成し、切削実験によりシステムの評価を行なう予定である。
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