本年度は温度変動下での基本的なねじ締結体の特性を把握することを目的とし、アルミニウム製の中空円筒あるいは有限長帯板が一組の鋼製のボルト・ナットを用いて初期締付け力され、これらの締結体が一様な温度場で温度変動を受ける環境下に置かれたとき、温度とボルト軸力変動量および締結体各部に生じる力学的特性について検討を行った。この解析に基づいた数値計算を行い、中空円筒については円筒の外径と内径の比、ガスケットの厚さ、ガスケットの有無などが温度変動に対し、ボルト軸力の変動に及ぼす影響について明らかにされた。更に理論解析に対応する実験を試み、これはボルトと中空円筒に高温ひずみゲージを貼り、温度とボルト軸力および中空円筒のひずみ変動を連続的に測定した。得られた実験結果と解析結果との比較検討を行ない、両結果はかなりよく一致することが示された。一方、有限長帯板については中空円筒の場合と同様の実験の他に、板厚方向に一組のボルト・ナットで締結された2枚の帯板が一端面から加熱され、かつ他端面から放熱を受ける2次元モデルでのねじ締結体の軸力変動および締結内での熱伝導特性について理論および実験の両面より検討した。上述のそれぞれの実験は本年度の購入備品である熱風循環式精密加熱槽により、締結体が温度勾配が一定でかつ均一に加熱され、このときの締結体各部の温度分布はマルチ温度計用多点替えスイッチからアナログ出力付き温度計を通してXーYレコーダにより記録した。翌年度の研究予定である管フランジ締結体の管内に高温の作動流体が封入された場合についても本年度に購入された圧力変換器を用い、現在実験準備中である。
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