1.乱流発生装置によって、乱流強度や渦スケールが大きく幅広いスペクトル分布を有する高レイノルズ数乱流場(Re〓10^6〜10^7)を形成し、3次元スペクトルや散逸スペクトルなどの統計的性質を詳しく調べた結果、(1)局所等方的な領域の大きさや平衡領域の存在条件や、(2)局所等方的とみなせる渦の最大スケールの準理論的な決定法、(3)乱流中に階層的に含まれる渦のスケールの推定法、(4)自己相似領域の推定法等を確立した。(5)これらの知見に基づき乱流拡散や物体まわりの流れなど乱流中における風洞実験に関して、良好な実験領域の設定などを的確に行なうことが可能になった。2.本乱流場が建物まわりの流れに及ぼす影響を調べた結果、(1)乱流中の最大渦スケールよりも建物が小さい場合、その背後にいわゆるビル風のような巻き込み現象が観察された。(2)上記の現象は乱流中の最大渦スケールと建物のスケールの比に依存する。(3)このことから風洞実験により建物等の環境影響調査を行う場合乱流強度が大気乱流と同程度であれば模型と渦のスケールを合わせることにより相似条件が満足されることが判った。3.本乱流場中において粒子拡散実験をレーザー計測と写真観測によって行った結果、(1)強い乱流場中ではスケールの大きな渦の作用によりプルームが大きく蛇行する。(2)本実験領域においてはプルーム幅は強い乱流場では時間に比例し弱い乱流場では時間の1/2乗に比例して拡大する。この結果はTaylorの拡散理論によってよく説明される。(3)強い乱流場中における拡散係数は130cm^2/secに達し、弱い乱流場中の3cm^2/secに比べ著しく大きくなった。この結果強い乱流場においては分子拡散の影響を無視し、乱流拡散の特性のみを抽出できることが判った。(4)強い乱流場中における拡散の様子は野外実験に基づく実験式とも良く一致し、大気乱流拡散の実験的シミュレーションが充分可能であることが判明した。
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