直接シミュレーションモンテカルロ法における、分子移動ルーチンのプログラム自動作成用エキスパートシステム開発に関し、本年度は、その対象として、「希薄気体中におかれたスパイン(円柱フィン)からの熱伝達問題」をとり上げ、自動プログラミングのための問題点を列挙した。この希薄気体熱伝達問題は、軸対称三次元問題であり、凸表面と凹表面とに囲まれ、流れ場形状としては典型的なものといえる。任意の点から出発した分子軌跡が、境界と交わりそして反射する様子を、計算機のディスプレイ上に表示することによって、プログラム作成時の分子軌跡の可視化を行った。分子軌跡の出発点を乱数により任意に与え、さらに分子の速度成分も任意に与えて、空間のある点から出発した分子が、どの境界面と最も衝突し易いかを調べ、それにより、その点の付近から出発した分子に対して、どの境界から順に衝突の有無を計算していくべきかを決定した。なお、このシミュレーションにおいては、将来、空間のセル分割に、微細方形セル法が有力な手段になり得るとの考えから、本来の計算セル(微細セルの集合体)が、微細セルをいかに効率よく取り込んで、空間中にとり残される微細セルが存在することなく、かつ、各計算セルは、不自然な空間分割形状とならないようにするための支援システムを構築した。さらに、分子移動の時間スケールが、巨視的現象経過時間に対して非常に小さいことによって生じる、このシミュレーション法の適用限界性に関して、従来行われている分子数に関する「重み」の取扱いを、時間的な「重み」に拡張することによってこれを解決する方法を見出した。また、ベクトル計算機によって計算速度を増加させるための並列性に対する考察も行い、自動プログラミングへの適応性も検討した。これらの一連の研究は、それだけで完全なものではなく、次年度以降の研究を進めるための基礎となるものとして位置づけている。
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