相変化を伴う気体流の分子気体力学による解析

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63550135
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 青木 一生 京都大学, 工学部, 助教授 (10115777)
• 研究分担者: 若林 正彦 神戸商船大学, 商船学部, 助手 (50191721)
• キーワード: 相変化 / 蒸発 / 凝縮 / 分子気体力学 / 希薄気体力学 / ボルツマン方程式 / 逆温度勾配現象 / クヌ-セン層

研究概要

1.異なる温度の2つの凝縮相間の蒸発・凝縮による流れは、ヒ-トパイプによる熱輸送等に関連して実用上重要であるが、逆温度勾配現象が起こるため、物理的にも興味深い、前年度には、蒸発・凝縮が弱い場合について、線形化ボルツマン方程式の差分法による精密な解析によって、異温度平面凝縮相間の気体の挙動を明らかにした。その際、凝縮相を離れる分子の速度分布が界面の状態だけで決まる慣用の境界条件を用いたが、実際にはそれが凝縮相に入射する分子の影響を受ける場合も多い、そこで、その効果を取り入れた一般化境界条件のもとで異温度凝縮相間の気体の挙動を調べ、気体の振舞が慣用の境界条件に対する結果から簡単な変換によって求められることを示し、逆温度勾配現象が起こるパラメ-タの範囲を全希薄度に対して正確に求めた。
2.凝縮相界面で強い蒸発、凝縮が起こる場合も実用上重要である。本年度は、ある瞬間に平面凝縮相に一様な希薄気流が吹き付けているとき、その一様流と凝縮相の干渉で生じる攪乱の伝播と凝縮相界面で起こる強い非定常凝縮を、非線形モデル方程式の差分解析によって詳しく調べ、攪乱の時間発展が4つの型に分類できることを示した。またこの解析をもとに、前年度に行った界面で定常な凝縮が起こる場合をさらに詳細に調べ、凝縮相の温度、その温度における飽和蒸気圧、無限遠における気体の温度、圧力、流速の間に成り立つ関係を、多数のデ-タによって数値的に確立した。
3.この関係式と前年度に求めた平面凝縮相における強い定常な蒸発の場合の対応する関係式を合わせると、任意形状の凝縮相境界を含む問題において、通常の流体力学レベルにおける界面での境界条件を与えることを、ボルツマン方程式の系統的漸近解析によって示した。さらにそれを応用して、異温度平行平板間の強い蒸発・凝縮による流れを解析し、気体の蒸発(凝縮)量と界面の温度比との関係を求めた。

研究成果

• [文献書誌] Kazuo Aoki: "Numerical analysis of rarefied gas flows by finiteーdifference method" Rerefied Gas Dynamics,edited by E.P.Muntz,D.P.Weaver,and D.H.Campbell(AIAA,Washington,DC). 297-322 (1989)
• [文献書誌] Yoshio Sone: "Evaporation and condensation on a plane condensed Phase;Numericalanalysis of the linearized Boltzmann equation for hardーsphere molecules" Physics of Fluids A. 1. 1398-1405 (1989)
• [文献書誌] Yoshio Sone: "Evaporation and condensation of a rarefied gas between its two parallel plane condensed phase with different temperature and negative temperatureーgradient phenomenonーNumerical analysis of the Boltzmann equation for hardーsphere moleculesー" Proceedings of the 3rd International Workshop on Mathematical Aspects of Fluid and Plasma Dynamics,edited by G.Toscani(SpringerーVerlag,Heidelberg). (1990)
• [文献書誌] Kazuo Aoki: "Numerical analysis of gas flows condensing on its plane condensed phase on the basis of kinetic theory" Physics of Fluids A. 2. (1990)
• [文献書誌] 青木一生(分担執筆): "流体力学の世界(第3章 低圧気体の流れの解析 執筆)" 朝倉書店, 230ペ-ジ( 3 37ペ-ジ) (1990)