三次元乱流せん断層は燃焼室内流や、翼後流など工業的に多くみられる流れであるが、その流れ構造は縦渦の存在などによって複雑になっている。その複雑さや非定常性のため平均速度の計測から流れ構造を解明することは困難で、不明な点が多い。本研究では流れの可視化によって三次元乱流せん断層の渦構造を実験的に明らかにすると共に、可視化方法の特徴、問題点などを検討した。 可視化方法としては従来から用いられている煙霧法および蛍光染料のシート光切断観察方法に加え、光機能性染料を用いたフォトクロミズム可視化法を用いた。流れ場として、平板壁に沿って噴出する円形噴流および一様平行流中の円形噴流を取り挙げた。前者については空気流で煙霧を用いて可視化を行い、流れの非等方的な拡大を観察した。この非等方性は縦渦によって生じていると推測されたが煙霧法では流れの内部まで観察できないので、流れ構造に関する詳細な検討はできない。また後者については水流を用い蛍光染料を噴出流に混入してシート状の光を照射して流れ場の断面を観察した。この蛍光染料を用いた方法では励起光の照射を受けている流体のみが蛍光を発するので流体粒子の時間的な流動展開を観察するには適さないことがわかった。 以上の可視化方法の欠点を補う方法として光機能性流体を用いたフォトクロミズム可視化法について種々検討した。光機能性流体としては、ケロシンに1、3、3トリメチルインドリノ-6'ニトロ-ベンゾピリロスピランを微量溶解して用いた。励起光としては発光時間1ms程度のストロボフラッシュ光を用いて(1)照射光量と変色濃度との関係(2)溶解濃度と変色濃度の関係(3)変色時間など基本的な特性を調べた。その際、励起光スペクトル以外の多くの光スペクトルを含むストロボ光では照射光エネルギーによる温度上昇およびその結果としての浮力が生じ問題となることがわかった。
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