細線や円柱の限界熱流束について、Lienhardらのように不安定理論に基づかない新しい理論によってLienhardらの理論では説明できない場合を中心に解析法の考察と関連する実験を行なった。 研究成果をまとめると次のようである。 (1)1mm以下の水平加熱線の線径による限界熱流束の変化は、加熱線径と1次気泡径の相対的大きさに係わる現象で、これを考慮して細線上の液膜厚さを決めれば、複雑な限界熱流束の変化をよく理解できる。 (2)大気圧近傍で圧力を下げた場合の限界熱流束の変化は、気泡離脱頻度が気泡径が大きくなることによる離脱頻度の特性を考慮すれば、よく説明される。 (3)垂直細線については、気泡離脱が気泡の螺旋運動の周期の4分の1を離脱周期として、限界熱流束を計算すればよい。 (4)細線や円柱をよぎる流れがある場合:気泡の浮力による上昇速度に流れの速度を加えた速度で気泡が上昇するとして、離脱頻度を求めることで、限界熱流束を計算すればよい。 (5)重力の加速度が変化する場合:Kutateladzeの式が重力の加速度の4分の1乗に比例する。重力を変えると限界熱流束のgへの依存性は、小さくなるが、この説明として、気泡離脱頻度のgへの依存性が小さいことと、熱流束が小さくなると液膜厚さの熱流束への依存性が大きくなることによる。以上検討において、実測値のない気泡離脱頻度や限界熱流束を観測した。これらのデ-タと既存のデ-タを用いて上述の理論を検証し、あらゆる場合の限界熱流束を説明できることが明らかにされた。
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