高発熱密度の電子機器の冷却や浸漬型の蒸気発生器などに見られる低液位あるいは狭く制限された空間での沸騰における熱伝達特性を明らかにし、さらに伝熱促進効果を最大にする最適条件を求めるための実験的研究を進めた。 1.低液位沸騰については、液位1mm以上での定常実験から、液位が低い程、核沸騰低熱流束域で伝熱促進が大きいことを確認し、高熱流束では液位2.5mm以上でバーンアウトが、それ以下でドライアウトが生じることを明らかにした。液位1mm以下では定常沸騰は実現できず、わずかの熱流束で伝熱面が乾いてしまうが、一定速度で液位をゼロ以下まで低下させる実験を行ったところ、液位が0mmでも伝熱面上に取り残された液膜が激しく沸騰蒸発し、このときの伝熱促進が最大となった。この結果を基に、ゼロ液位近傍の高熱伝達率沸騰を有効に活用する沸騰系として、液位をゼロ近傍で振動させる場合をとり上げ、特に変動周期の影響について検討した。その結果周期10秒付近に伝熱促進効果が最大となる条件のあることが明らかになった。 また、ゼロ液位の高熱伝達率を有効利用できる系として傾斜伝熱面をとりあげ、上端部でゼロ液位になる傾斜平板の沸騰の様相を観察し、それを基に頂角の大きい円錐形伝熱面の伝熱促進について実験を行った。この伝熱面では、低熱流束域での大きな伝熱促進の外に、高熱流束域でも伝熱面周囲からの安定な液体の供給でドライアウトが生じにくく、高い最大熱流束が得られることが明らかになった。 2.制限空間の沸騰では、適当な大きさ、ピッチの孔を有する干渉板を伝熱面上方より近づけ、広い伝熱面においても自律的な気液交換が円滑に行われ、しかも核沸騰低・中熱流束域で伝熱促進を得るための系について実験を行い、適当な孔径・ピッチの組み合わせを求めた。
|